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オーストラリア縦横断 24,000km
24,000km Across Australia.

 冒険半島ケープヨーク

 1000km以上ダートが続くケープヨーク縦断路では大小多くの川が待ちかまえていた。ご丁寧にも河原には
「ワニ生息につき遊泳禁止」の看板がたっている。もちろん橋は架かっていないので、川の中を水しぶきあげて突破。
 道は全体的に狭く、アップダウンを繰り返すワインディングから、ガレ場、赤土、深い砂の道までバリーエーションに富む。地平線に向かってまっすぐ延びる内陸部のルートとは対照的。
 道を行く車はほとんどが四輪駆動車で、雨期の水没対策のためシュノーケルを装備した車が多い。日本では考えられないが、ここでは四駆車が実用的な道具として使われているのだ。

 半島を北へ進むほど道ばたに見える蟻塚が大きくなり、大きいのは5メートル以上もの高さに及ぶものまで出現してきた。 ある夜、蟻塚のそばにテントを張って寝ている時に体中ちくちくすしてきた。なんと懐中電灯に照らされたテント内におびただしい数の蟻がうごめいてるのだ。
 その数百匹! 蟻が足の皮膚を食い破ってあっちこち血が滲んでいる。あわててテントの外に避難するが、時計を見るとまだ夜中の三時。蟻に占領されたテントをどうすることもできなくて、夜明けまで呆然とした。

 こんな半島を途中でキャンプしながら走り抜け、ヨーク岬に立ったったときの嬉しさはひときわ大きいもの。岬から海を眺めながら一人祝杯をあげた。


 見捨てられた道、ガンバレルハイウェイを越える

 ケープヨーク縦断路、プレンティハイウェイ、タナミトラック、ワーバートンロードに引きつづき、オーストラリアでももっとも交通量の少ないルートのひとつ、ガンバレルハ
イウェイへと進んだ。ウィルナの村からスチュアートハイウェイまでは約1700kmの距離。ハイウェイとは名ばかりで、その行程のほとんどは砂漠地帯の未舗装路。最長無給油区間は700km以上に及び、その間は原住民の村さえも無い無人地帯である。

 行程には部分的に廃道になっている区間があり、その部分を迂回するように新しい道ができている。
 しかしここはせっかくなのですべてオリジナルの旧道に轍を刻みたいもの。
 だれも通らない廃道部分ではバイクのトラブルはそのまま死に直結してしまうだろう。2日間かけてバイクを整備した後、水 10リッター、ガソリン 50リッター、食料3日分積んで出発した。

 ワーバートン〜ジレース間を北回りに走る廃道区間では砂丘が何十、何百と続いた。幸い、季節はずれの
雨が地を固めてくれたようで、ほとんどスタックする事もなく進むことができた。

 満天の星空

 毎日赤い地平線に向かってアクセルを開け続けた。一日一台の車ともすれ違わないまま600km以上走り続け
た日もあった。恐るべき空白だ。
 夕刻、適当にキャンプ地を決めエンジンを止めると辺りが静寂に包まれ無音の世界が広がる。
「うおぉーーー」と意味無く叫んではみるが声は闇の中に吸い込まれて消えた。

 地平線を真っ赤に染めた夕陽が沈むと、今度は満天の星空が広がる。かつて日本でこんな星空を見たこと
はなかっただろう。オーストラリア内陸部は空気が乾燥しているので星がひときわ輝いて見える。地面に寝っ転がると視界すべてが星、星、星。
くっきりと見える天の川には南十字星がかかっている。この美しい星空は一生忘れないだろう。

 オードナダッタトラックのあとはバーズビルトラックを越え今回の旅は終わった。
 大都市シドニーに戻ってしまうと赤い地平線が無性にこいしい。帰りの飛行機の中では「必ずまた来るぞ!」とつぶやいた。

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