オーストラリア大陸縦横断24,000kmの記録
旅のトラブル集
ガンバレルHWY.のAbandoned(廃道)区間を走行。最後に通過した村から200km以上
走っているのだが、道は細く険しくなるばかり。「はたしてこの道でよいのだろうか!?」
旅にトラブルはつきものである。今回の旅でも大なり小なり多くのトラブルに見舞われた。起こりうるトラブルをいかに回避するか、起きてしまったトラブルをいかに解決するかがスムーズな旅を続ける上で重要な課題となってくる。ここではオーストラリアの地で直面したトラブルとその原因、対策を紹介しよう。 |
マシントラブル
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![]() ![]() ![]() ![]() ←道を外れて砂漠地帯を走る。正に砂の海の航海だ。 |
スプロケットのボルト穴が小さい! アリススプリングスで最初のスプロケット交換をしようとした時のことである。シドニーを出発するときにあらかじめ部品を用意しておいたのだが、そのイタリア製のスプロケットを取り付けようとしたらボルト穴が小さくて入らなかった。ラベルにはしっかりと'92XR250用と書いてあったが、聞いたこともないメーカーの製品を信頼すべきでなかったのだ。その時はすぐにバイク屋へ行き、5ドル出して加工し直してもらって解決した。 チェーンが妙にすり減っていると思ったら前側のチェーンスライダーが摩耗して穴があいていた。スイングアーム側もチェーンに当たっている部分が削れている。幸い摩耗を予測してスペアを持っていたのでその場で交換する事ができた。日本で経験していたことだがホンダのオフロードバイクのフロントチェーンスライダーは一万キロで減り尽くしてしまう。 ガソリン20リッター入りのジェリカンと10kgもの荷物を載せて走っていたため、キャリアの取り付けボルトが折れてなくなっていた。このキャリアはシドニーのバイク屋で注文した手作りである。キャリア本体からステップの下にかけて鉄パイプが通っているのでかなりの荷重に耐えられるよう頑丈に作ってある。ボルトが折れたにもかかわらずしっかり固定されていた。これが市販のキャリアだったら一本のボルト折れですべて脱落していただろう。 サンドオーバーハイウェイを走行中、リヤタイヤが引っぱられるような感覚を覚えパンクしたことに気がつく。悪いところでパンクした。しかも修理しようと道具を出すがパッチゴムがない。ケープヨークでパンクしたときにかなり使った覚えがあるが、すべて使いきったはずではなかった。バッグの中をかき回すが、無いものは無いのである。このバックロードに入って200km以上走ったが入り口近くで一台の車とすれ違った以外誰にも会っていない。もちろん民家も原住民の村もない。地図上では一番近くの村まであと100km以上ある。通りがかりの人に頼もうにも、たとえ一日中待っても誰も通らないだろう。参った。 |
その他のトラブル
![]() 雨期のオードナダッタトラック。いたる所に大小の水たまりができている。水没した地元のオージーライダーを次の村まで170km牽引した。 |
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車両登録できない! まだ走り出してもいないのに問題が起きた。バイクを購入し、改造も終え、いざ車両登録しようとRTAオフィス(陸運局のようなもの)へ行ったのだが、そこで登録する時にクレジットカードかメディカルカードの提示を求められた。登録するためには万一事故を起こしたときの賠償能力を証明する書類が必要らしい。しかし当時の僕はクレジットカードの類は一枚も持っていなかった。パスポ−トや国際免許を見せても「NO」という。 オーストラリアの多くのバックロードは牧場の中を通っている。それどころか幹線道路でさえもオープンレンジとなっていて、路上に牛が歩いていることがある。極端な例では高速道路のグリーンベルトに放牧している場合もあるから驚き。 ケープヨークのキャンプ場でのこと、夜中に体中がチクチク痛みだし飛び起きた。懐中電灯をつけてみたら、なんとテントの中に蟻が何千何百匹とはいずり回っているではないか!痛いはずだ。たくさんの蟻が皮膚にかじりついている。鳥肌たてながらテントから脱出。蟻に完全にテントを占領されてしまったのだ。まだ夜中の3時だというのに完全に目がさえてしまった。 やむを得ない場合を除き、ブッシュキャンプはなるべく村から近いところですべきである。なぜかというとキャンプ中に何らかのトラブルが起き一人で対処できない場合、やむを得ず助けを求めなければならない必要に迫られることがあるからだ。 ギブソン砂漠横断ルートのひとつであるワーバトンルートを移動している時のことである。ロードハウスを過ぎ、360度地平線の風景の中を約150km走って適当なキャンプ地を見つけ野宿していたのだが、夜になって深い眠りから突然起こされる出来事が起きた。そこは半径150kmの土地に人はまったく住んでいないはずの砂漠の中である。自分以外誰もいないはずのテントの中に人が二人現れ、それぞれ俺の足と胸のあたりを押さえつけているのである。幽霊だ!ギョッとしたが体が動かないし声も出ない。必死で二人をふりほどこうともがくのだが体が全く動かないのだ。そして呼吸も止まりそうになった。いわゆる「金縛り」というものだ。気をしっかり持って苦しさに耐えようとするが朦朧とした意識が次第に遠のいていくのがわかった。そのとき、「あぁ、ここで死ぬのか」と思った。 7月になってアリススプリングスからギブソン砂漠を越えて大陸南西部に入った。ある日の午後、砂漠の一本道を走っているとき、目を疑うような現象に出くわした。急に強風が吹きすさんだと思うや、天空に滝が現れたのだ。空中に真っ黒い岩が浮き、そこから大量の水が流れ出ている。その大きさはナイアガラなんてものではない。幅数百メートル、落差数千メートルで何本もの虹をたずさえ轟音をあげて移動している。怖いと思ったが美しくもあった。バイクを止めて見とれていると滝は自分の方へ向かって動いてきた。逃げようとして走り出したがたが滝の速度があまりにも速く、追いつかれてしまった。頭から水がザバザバと降りかかり、水圧で転けそうになった。止まってバイクを支えているのがやっとだ。周りはあっという間に水浸しになり道路の外の低いところは地平線の彼方まで海のようになっている。路上も次第に水かさが増し、水深5センチ、10センチと見る間に増えてゆく。このまま水かさが増えれば溺れてしまうだろうと思ったが滝は更に東へと移動し、自分の立っているところはそれ以上水嵩が増さなかった。 一日数台という交通量のバックロードを走っている時、ガソリン臭いのに気がついた。見るとジェリカンの下から燃料が漏れていた。振動で鉄製ジェリカンの接合面が裂けたらしい。ここではガソリン1リッター失うごとに20km押して歩くことを意味する。 オードナダッタからマリーの町へ向かう途中、泥沼で転けて動けなくなっていたバイク乗りがいた。この時期、大陸南部は雨期である。雨が降り続けばバックロードは泥沼と化する。ポンコツのロードバイクに乗った彼はオーストラリア人だった。オージーでもアウトバックの怖さを知らない者は容易に罠にはまってしまうのだ。 |