世界各地からやってきたクレイジーなやつら

 オーストラリア砂漠地帯横断オージー自転車野郎(Roy)
 バイクでももがき苦しむディープサンドの道に一本の細いタイヤの跡が延々 と続いていた。最初それがなんだかわからなかったが村のキャンプ場についてから知ることになった。村と村の間隔が500km以上もの砂漠地帯を自転車で走る超人がいたのだ。彼はヴィクトリア州出身のオーストラリア人。約3カ月かけて行程4000kmの大陸横断をするという。しかも彼が選んだ道は全行程ほとんど舗装道 路ではない砂の道だ。500km以上民家も何もない砂漠地帯をいかに移動しているのか不思議だった。水は井戸を利用するが常に40リッター携帯しているという。砂の深い道では自転車は歩くほどのスピードまで下がり、朝から晩まで走っても70kmしか進まない日もあるという。食料などは十分な量積みきれないのでディンゴやエミューを捕まえて食べたという。そんな破天荒な旅の話が印象的だった。
 フロリダからやってきた観光パイロット
(John & Angel)

 フロリダからアラスカまでぽんこつのスモールカーで移動している人に出会った。彼等に会ったのは偶然にもブッシュキャンプ地だった。普通ブッシュキャンプする場所は人目に付かなく、誰も来ないような場所を選ぶのが鉄則なので、 それに従いその日は廃道を走った先の湖の畔に適当なキャンプ地を見つけ野営していた。まさか人がやってくるとは思わなかったが夜の12時頃、一台の車が走ってきた。最初は強盗かと思いびくついていたが彼等もキャンプ地を探して走ってきたらしい。朝になってコーヒーとパンの朝食をご馳走になりながら話を聞く と彼等はなんとフロリダから6,000km車で走ってきたというのだ。車はかなりガタがきているポンコツだ。仕事のため、これから更にアラスカ、キナイ半島までの1,500km 走るという。
ケベックから来た超貧乏バックパッカー

 カナダのデンプスターハイウェイを移動しているとき、ツンドラ地帯から森林限界に入ったところで荒野に突如テントがあらわれた。何かのトラブルでやむを得ずビバークしているのかと思ったが違った。ホワイトホースの学校に在籍している学生という彼は訛のある英語を喋った。それもそのはず、彼はフランス語圏であるケベックで生まれ育ったのだ。こんな所にテント張ってどうしたのか訊くとただ単にキャンプしてると言う。あたりに車もバイクもないのでどうやって来たのか訊くとヒッチハイクで来たという。それにしても変な奴だ。話を聞いて いるうちにここでキャンプしている理由がわかった。彼は後ろに見えるふたつの山に登り、峠を越え、途中熊にあったりしながら山の裏側にある湖まで三日もかけて歩いていった。そして一週間も歩いてやっとこの道路に出たのだ。テント以外の装備はどれも使い込まれたもので、ほとんど先輩たちからのお下がりだという。食料を買うお金もないので沢でトラウトを捕まえて焼いて食べたりカンジキ兎を捕って食べたりしたという。まるでインディアンのような生活だ。
 四輪北南米縦断スウェーデン人

 北極圏内の町イヌビクで軍服を着た三人組に出会った。彼らは装甲車のようなボルボのトラックで旅行している。スウェーデンからニューヨークにトラックを送り、三ヶ月かけてカナダを横断、この極北の地へ来たわけだが旅はまだ始まったばかりだという。これからアラスカをまわった後、北米大陸を縦断、メキシコ、中米を通りパナマから南米に渡って、アマゾンを横断し更にアルゼンチン・ ウシュアイアまで行くという。この時期の極北はこういった旅行者のなんて多いことか。彼等は中米の紛争の火種がくすぶる地も軍服姿で歩くのだろうか?「No,we aren't so crazy.」
 自転車北南米縦断スイス人

 カナダ国境近くのアラスカのキャンプ場でイタリア系のスイス人旅行者にあった。彼等もまたアラスカから南米最南端まで走る旅人だ。自転車という乗り物で人力で走る彼らを見ているとガソリンを燃やして走る乗り物に乗っていることに後ろめたさをおぼえる。
 他にドイツ人やフランス人のキャンパーがいたが、彼等はイタリア語、ドイツ 語、フランス語、英語、スペイン語を不自由なく使ってコミュニケーションして いた。まったく頭が下がる思いだ。

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